日対研(跡地)

旧 特定非営利活動法人 日本対性暴力研究所

2017年3月に解散した日本対性暴力研究所の研究開発の記録を保管・公開しています。

第6章 後遺症

レイプ被害の後遺症を軽く考えてはいけません。大変重い後遺症もあり、場合によっては死を招くものもあります。従ってレイプから数年経っていても被害者を支援するのは非常に重要な事です。

「死んだわけではあるまいし、大げさなんだから」と言うようなリアクションは愚かなだけでなく悪意に満ちています。レイプ被害者の苦しみを否定するのは生傷にナイフを刺すようなものです。

レイプ被害の後遺症は人まちまちで、数知れません。以下に後遺症の種類を記載します。

健康面(身体と精神)の後遺症
自殺願望、欝病、薬物使用、薬やアルコール、過食症、拒食症、自傷行為、繰り返す感染症、背中の痛み、頭痛、髪の毛が抜ける等
日常生活における後遺症
リスクを伴う行動、失業、孤立、事務系作業への恐怖、医者に対する恐怖とくに産婦人科医と歯医者、セルフエスティーム、自己信頼の損失、脳に穴があいたような感覚、他者への恐怖、接触することの嫌悪感(挨拶のため手を握る事もできなくなる場合がある)、セックス・レスまたは危険なセックス、人を心から愛せない等

リスクを伴う行動とは、悪影響や死をもたらす全ての行動を言います。リスクを伴う行動をとる人は自殺や自分で自分をだめにする可能性を秘めています。自分の身を自ら危険にさらす人は人の支援を必要としている人物です。

レイプ被害後、頻繁に恋人やパートナーを変える人は、周りからはレイプ被害を受けていないように見え、実はレイプではなく、もともと数多くの男性との行為を好む人と思われてしまいます。願わくば、支援者の皆さんは精神科医でなくとも、この行動が単なる「好きもの」の行動ではなく、レイプのトラウマによるものでそれがいかに重大かを理解していると思います。

複数の相手との関係理由はレイプの思い出があまりに苦しく、被害者はその危険なシチュエーションを再現して上手く振り切れたと錯覚したいためのものです。その主なる目的は恐怖を打ち消す事です。こうして被害者は自分の限界を確認し、レイプの場面を再現し、上手く振り切って、恐ろしい過去を捨てようとしているのです。

失敗を招く行動を、自分から選ぶようになる場合もあります。それは、被害者に自分は不必要な人間で無能で不運な人間であると思わせる全てのものを指します。

  • 暴力的なパートナーを選択することは恋愛の失敗を意味し、リスクを伴う選択です。暴力的な男性は強い男性、強い男性は女性を守ると思われがちですが、なんの根拠もない妄想です。愛と優勢は別ものですが被害者はそれに気づかないケースが多いです。
  • 被害者は地球の全ての生き物に自分の身を守れることを証明したいがために、アグレッシッブな行動にでる事があります。感情、知識が薄らぎ、家族から頭がおかしくなったと思われ、孤独になります。
  • 責任や権限を有する仕事を拒否するのは、失業を招く可能性があります。
  • 被害者はわざわざ、必ず間違った選択肢を選ぶようになることもあります。

恐怖はレイプ犯にとって好都合な感情

レイプ犯は勇気のある人物ではありません。女性や子供、弱い人だけをターゲットにします。レイプ犯の性器は被害者にとって凶器でありレイプ犯にとっては武器です。勇気がないため、一人でレイプできない加害者は複数で犯罪を犯します。これを。集団レイプといいます。

レイプ犯がターゲットを探す時、まずは自信のなさそうで臆病そうな女性を狙います。あえて強そうで大声を張り上げそうな女性は選びません。

繰り返しレイプ被害を受けた女性は、罪悪感から「私が彼らを引きつけているのだ」と考えます。それはまったく間違った思考です。レイプ犯が弱そうなターゲットを探しているだけです。

レイプを受けてからレイプ以外の攻撃を受けることもレイプの後遺症と考えられます。

レイプの後遺症、本章で覚えておくべき重要な点は、レイプ=後遺症(レイプがあれば必ずなんらかの後遺症がでる)と考える事です。レイプ後に生活が乱れるのはカルマのせいではなくレイプが原因です。風邪で熱や喉の痛みが出るように、レイプは苦しみと痛みをもたらします。後遺症をレイプに関連つけなければ、それを克服する事はまず難しいと思って下さい。

怒り

怒りは悪い感情だと思われています。ですが、悪いのは暴力で怒りではありません。自分を痛めつけた人に怒りを感じるのは当たり前です。車の窓を割られた時、物を盗まれた時、だれかと接触して財布がなくなっているのに気がついた時、足を踏まれて謝ってくれなかった時、喧嘩の後、とにかく人から痛めつけられたら怒りを感じるのは自然の感情です。ならば、レイプ後に怒りを感じるのも当然でしょう!

怒りをもったレイプ被害者は、立ち直る可能性のあるレイプ被害者です。被害者が怒りを感じていると言う事は、だれが唯一の犯罪者であるかを自覚している事を意味し、それが立ち直るきっかけとなります。怒りの反対語は許しです。レイプ被害者に絶対犯罪者を許すことを薦めないで下さい。突然あなたを苦しめる人、あなたに平手打ちする人を許したいと思いますか?

その平手打ちはあなたにとって痛み、屈辱、そして自分がまるでただの肉の固まり扱いされたような気分にさせるでしょう。平手打ちでそんな感覚になるのですから、レイプの場合を想像してみて下さい。許して、レイプ犯にチョコレートでもあげますか?信仰している宗教が原因で許しに走る被害者も少なくありません。熱心な信者や無宗教者はとくに許しに走りがちです。復讐をしてはいけないと言う観念からレイプのような拷問を受け入れる必要はありません。

宗教の影響でおおくのレイプ被害者はその犯罪を許そうとしますが、結果はいつも同じです。被害者はますます精神を病みます。許そうとして許せない(当たり前ですが)自分を責めてしまうのです。レイプと犯罪はけして許される行為ではありません。そしてレイプ犯は滅多に謝罪をしてきませんので、全ては闇の中に葬られてしまいます。許すことに貴重なエネルギーを使い果たす女性を何人も見てきました。レイプにおける許しは状況を悪化させる誤った行為です。

次の点を強調してください。許さなければいけない理由は存在しないし、許しても状況は改善されない。被害者が許したがっていても、絶対に被害者の意見に同意しないでください。上手く、話を許さない方へ持っていけなければ、次のような発言で会話を中断してください。「あなたにあのような危害を加えた犯人は許される価値はない。」ただ、この発言で会話を中断するまえに必ず落ち着いて、被害者に問題点を説明するようにしてください。

被害者との会話例を記載しますので今後の支援の参考にしてください。

  • 被害者:私って本当に無能だわ。許そうと思っても許せない。
  • 支援者:何故許そうとするの?それがあなたの何の役にたつの?
  • 被害者:許せば私が元気になると皆が言うの。
  • 支援者:皆がまちがっていたら?
  • 被害者:皆が言うのだからきっと正しい事なのよ。
  • 支援者:ミスをした人の事は許してもいいけれど、今回はミスではないの。何故、レイプを許す必要があるの?彼はあなたを破壊しようとしたの、そして今この瞬間も犯人は何もなかったかのように平静に暮らしている。でもあなたは苦しんでいる。
  • 被害者:でも他に方法もないし
  • 支援者:許そうとするそのエネルギーを理由なくあなたを傷つけて犯罪者への怒りに変えてみたら?
  • 被害者:怒っているわ、自分に対して怒っているの
  • 支援者:抵抗しなかった自分にはらが立っているの?
  • 被害者:そう、それに私が彼を止めるべきだった!
  • 支援者:レイプ犯が自分で自分の行動を抑えるべきだったの。レイプ犯が自分で抑える以外だれもレイプ犯を抑えることはできない。レイプ犯には選択肢があった、けれどレイプ犯はあなたに選択肢を与えなかった。
  • 被害者:それはそうだけれど、それでも…
  • 支援者:レイプ犯はあなたに謝罪した?
  • 被害者:もちろんしていないわ!
  • 支援者:もちろん謝罪をするはずがないのならあなたがレイプ犯を許す必要もない。
  • 被害者:でも他に方法がないの…
  • 支援者:他の方法は私がいくつか教えて上げる。どう?聞いてみる?(方法は 人格の再形成の章に記載されています)

ゆっくりと会話を進めてください。被害者には時間が必要です。罪悪感から怒りへの感情の移行は段階を持って行わなければなりません。

許し同様、忘れる行為も解決策にはなりません。被害者は忘れるためのエネルギーを沢山使うが最終的には失敗感でいっぱいになります。レイプ被害者を無感情にするのは不可能ですので忘れる事は適切ではありません、状況を理解し自分を再形成する方法を薦めてください。

人には記憶と言うものがあります。時として悪い思い出は、消してしまいたいと思うこともあるでしょう。記憶は貴重なもので、自分自身であり、自分の人生そのものです。それは貴重なもので、無視はできません。では耐えられない思い出はどう処理するばいいのか? 耐えられるように正しくそれを認識することです。被害者は被害者、レイプ犯は犯罪者(それ以外の側面は存在しない)。

傷同様、トラウマは治療できます。その治療の後も、記憶は残りレイプがフラッシュバックのように蘇ることはなく、脳が命令した時だけで記憶として呼び戻されます。

許したり、忘れたりしようとすればするほど、レイプを思い出すため、逆効果です。許す、忘れるを絶対に被害者に薦めず、怒りを間違いではなく自然の感情として被害者に認識させて下さい。

忘れようとしたレイプ被害者は全員同じ状態に陥ると言われています。レイプの事しか頭にうかばなくなってしまうのです。

許そうとしたレイプ被害者は全員同じ状態に陥ると言われています。許せない自分に罪悪感を覚えるのです。

そして、その状態を当然のお仕置きのように解釈します(調子が悪いのは許せないからだ)。人は感情で成り立っています。喜び、歓喜、有頂天、愛、やる気、プライド、幸せ、明るさ、苛立ち、興奮、焦り、恥じらい、後悔、悲しみ、嫌悪、疑問、嫉妬、遊び等、、、そして怒り。怒りは許された感情です。繰り返します、暴力は許されず、怒りは当然の感情です。怒りはエネルギーのサイン。怒りをかんじない被害者は限界状態にある被害者です。怒りは自己愛の証。反発しない被害者は自分へのセルフエスティームを無くしています。怒りは状況把握の証拠。自分に怒りを向ける被害者は加害者のマインドコントロール下にあります。怒りは人格の再形成へのステップです。恥じらいと罪悪感しか持たない被害者に回復の可能性は無に等しい。

大きな声で叫びましょう。怒りよ、万歳! 怒りのステップはレイプ被害者が立ち直るのに必要不可欠なステップです。

 

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