日対研(跡地)

旧 特定非営利活動法人 日本対性暴力研究所

2017年3月に解散した日本対性暴力研究所の研究開発の記録を保管・公開しています。

第4章 罪悪感

レイプ被害者の大半が罪悪感に苛まれます。まるでレイプ犯と被害者の役割が逆転したような気持ちに陥ります。

責任はレイプ犯ただ一人にあり、罪を犯しているのもレイプ犯ただ一人です。それにも関わらず、被害者が責任を感じ、罪悪感に苛まれてしまい、被害者の心は壊れてしまうのです。

この状況を打破するには罪悪感を打ち消すしかありません。罪悪感が残ったままですと、冷静に考える事ができなくなり、被害者にとってのセカンド・ステージである「怒り」へ進む障害になってしまいます。

では、罪悪感と恥じらいは異なるのでしょうか? 実はあまり違いはありません。何故なら、どちらも苦しみを産み、どちらも無言へと被害者を追いやるからです。従って支援者は被害者から罪悪感や恥じらいと言われた場合、どちらも同じ意味だと思って下さい。

罪悪感も恥じらいも口にしない感情です。それは恥ずかしいから、自分が悪いと思っているから。そこから自尊感情の低下(どうせ私は無能だから)や自己嫌悪(自分が大嫌い)が始まります。

そして、恥じらいや罪悪感で無言になってしまうと、レイプ犯との共犯意識を感じてしまう場合があります。その状態こそ、レイプ犯の望む状態なのです。被害者が無言でいれば加害者は裁かれず、犯罪を繰り返す事が可能になります。被害者側は、無言でいれば加害者と秘密を分かち合える、そんな共犯意識を持ってしまいます。

支援者には被害者が悔しさと絶望を抱えながら、罪悪感に苛まれているように見えるでしょう。しかし、見かけに騙されないで下さい、レイプ被害者は罪人になりたいのではありません、被害者はあなたにどれだけの罪悪感によって、自分が壊されているか表現をしてみせているのです。

思い込み (リマインド)

私たちはレイプについて数え切れない程の思い込みを植え付けられた社会に暮らしています。何度も何度も聞かされた思い込みの言い回しはちがえど、どれも被害者を破滅させるものです。まるで地球全体がレイプ被害者にレイプの責任を押し付けているかのようです。

この一般的な思い込みと周りからの不適切な行動や言葉は被害者の罪悪感を深めるばかりです。そして、被害者は底なし沼から抜け出せず、状態が悪化していく場合もあります。

一般的なレイプについての思い込みは。濃い化粧をしてミニスカートを履いた女性が突然、いかにも筋金入りの悪者と言う風貌の男性に駐車場でレイプされる、です。

もちろん、見知らぬ人による駐車場でのレイプの事例は存在しますが、もっとも一般的な事例とは言えません。

レイプの事例で一般的なのは、顔見知りによるレイプで、被害者の自宅もしくはレイプ犯の自宅で実施されます。 駐車場でのレイプは殆どのレイプがそうであるように、レイプ犯が事前に細かく計画をして実施されるレイプです。レイプ犯は自分の選んだ駐車場で事前に非常口を確認して、事前に選んだターゲットを待ち伏せし、レイプします、思いつきでレイプはしません。

もう一つの思い込みは、レイプ後の被害者の外見的特長です。目に青あざができていない、唇が切れていない、鼻が折れてい、だからレイプではないと言う思い込みです。現実的に被害者が殴られてレイプされた場合それは暴力を伴うレイプですが、外的傷害を伴わないものもレイプです。

被害者を疑う
残念ながら周囲がレイプ被害者に最初にかける言葉は被害者に責任を押し付けるものである場合が多いです。例えば。
夜、外で何をしていたの?
支援者の皆様、覚えておきましょう、誰であろうと、仕事帰りに夜または深夜外へ買い物へ行ったり、散歩をしたりする自由がありますし、日が沈むのと同時に家に閉じこる理由はありません。
どんな服を着ていたの?
被害者は服を着ていたのです!それがオレンジの皮を寄せ集めて作ったボロ服であろうとレイプをしていい理由にはなりません。
彼女は何故彼を家に入れたの?
何故人を家に入れてはいけないのですか?家に人を入れるのは禁じられていません。だれでも人を家に入れて、コーヒーを飲んだり、食事をしたり、お話をしたりします。
話しかけられて何故彼に答えたの?
だれでも、話しかけられれば普通は答えます。あなたにだって、見知らぬ人に声をかけられて答えた経験はあるでしょう?危険がないと思ったから答えた、答えない方が危険かもしれないと感じたから、等理由は様々です。
何故そんなことをしたの?
そのことが禁じられていないからです。禁じられているのはレイプです。

上記にあげた諮問を読み返してみると、まるで、被害者の受けた被害よりも、レイプ犯が服役するであろう年数の方が気になっているように聞こえてしまいます。告発をしなければ、レイプ犯は別のターゲットを見つけてまたレイプを繰り返しますし、被害者は何年もかけて立ち直る(立ち直れればの話ですが)事になります。

レイプ未遂、と言う言葉は存在しません。

被害者はレイプされてあまりにも強い恥じらいを感じているため、堂々と「レイプされました」とは言えません。だからと言ってレイプ未遂、と言う言葉はレイプ犯を助ける表現になるので使わないでください。

飛行機事故にあった人の言い分を疑いますか?横断歩道を渡って車に引かれた人にたいして道の向こう側に行こうとしたから車に引かれても仕方がない、と言いますか?癌で苦しんでいる人に、その苦しみは嘘だとバカにしながら言いますか?そんな事をする人は卑劣な人以外にはいません。ところがレイプ被害者の言葉は疑われて当たり前なのが今日の状況です。

以下に例を記載します。

  • レイプを告発しながら、後にレイプ未遂に訂正した女性は、周りが自分に向ける行動や言葉に耐えられないと思ったから訴えを取り下げたのです。だれも女性の苦しみを理解しなかったのです。
  • 幼少期にレイプされ、それをカミングアウトするのに20年かかって、やっと言葉にできたと思ったら周りから疑われて被害者は自殺してしまった。被害者の恐怖はだれからも理解されなかったのです。
  • 父親にレイプされた娘が母親にレイプを打ち明けたとき、母親が娘に平手打ちをしなかったら、その子はアルコール依存症にはならなかったでしょうし、繰り返しレイプに悩まされる事もなかったでしょう。

危険人物であり犯罪者であるレイプ犯を野晴らしにしたくなければ、レイプ被害者を疑わない事が先決です。

レイプ被害者が無言になってしまう理由の一つに周囲から後ろ指を指されることがあげられます。被害者が自由に話せればレイプの告発件数は増え、レイプを繰り返すレイプ犯も減るでしょう。

一人のレイプ犯が1度しかレイプをしないと思わないでください。レイプ犯は被害者を破壊する事に喜びを感じています。従って同じ人、もしくは違う人にレイプを繰り返します。

レイプの話を聞いて、許される自問は1つだけです。何の権利があって犯人はレイプをしたのだ?です。その答えも1つしかありません。権利は何一つ存在しない、です。

脳の反応

レイプされている時、身を守るのは、とてつもなく困難です。恐怖がその理由です。恐怖にて背中に羽は生えません、恐怖で反応は麻痺します。危険なシチュエーションで不思議な力が漲るのは高度な訓練を十分に受けている場合だけです。現実では逆です。恐怖で凍り付き行動できなくなります。多くのレイプ被害者は死ぬのではないかと思って怖かったと証言しています。死の恐怖は半端なものではありません。

レイプの時、脳内で様々なリアクションや感覚が発生し、それぞれが衝突し合います。恐怖で思考能力が失われ、考えられない状態がまた別の恐怖の波を呼び寄せます。最後に全てに火がつき、麻痺してしまいます。意識が反応しなくなり、体も反応しなくなり、声帯も音発生不能となります。被害者は何も行動できなかった自分を恨む。自分自身をコントロールが出来なかった事が罪悪感を産みます。

次の文章は支援の時、何度も使うことになるので覚えておいてください。

「すごく怖いと何も出来なくなるのよ。」

被害者は一人一人、別の人間です。各レイプ犯もレイプもそれぞれ異なります。ところが被害者の反応はだいたい共通しています。レイプが実施されているとき、被害者はまったく反応しなくなったり、ロボットのように機械的になったと証言しています。又別の被害者は自分がそこにいなかったような感覚だった、その場面を自分の体から抜け出して見ていたようだった、と証言しています。レイプの直ぐ後は記憶が喪失される場合があります。これらの反応は全て自分に起こっている恐ろしい事態を脳が守ろうとして起きる現象です。

この反応について被害者が正確な説明を受けてなかったり、理解していなかったりすると被害者は記憶が走馬灯のように頭をよぎり、自問をし続け、罪悪感に襲われます。

レイプの事例によっても異なりますが、被害者の自問は次のタイプのものです。

  • 私はどうして、事態を把握できなかったのか?
  • 状況の雲行きが怪しくなった時、何故私は逃げなかったのだろう?
  • 彼が襲って来た時、何故彼の股間を強く蹴り上げなかったのだろう?
  • 某時から某時まで何故私は無反応でいたのだろう?
  • 私は何故自分の身を守らなかったのだろう?

等など

何故レイプ犯ではなく被害者が罪悪感に苛まれるのか?

レイプ被害者は自分をスケルトン人間だと思っている人が多く、(つまり見抜かれている)、次のように思い込んでいます。この女に罪がある、全てこの女の責任、この女こそが恥の象徴である。

被害者は毎秒この感情に襲われ、疲れと絶望感に陥ります。想像してみてください、自分の知っている全ての人間、すれ違う全ての人間が自分を批評しているように見えていたとしたら。。。これは被害者がパラノイアだからそうなるのではありません。

パラノイア精神疾患ですが、レイプ被害者は病人ではありません。被害者は生きている瞬間ごとに罪悪感に苛まれている人物です。

レイプの後、被害者の脳にレイプの刻印がされてしまいます。親密さが犯され、被害者の身体はまるで壊してもいい古い玩具であるかのように扱われ、意識はその事態についていけなくなり、反応できず、起きている事を受け入れてしまっているような感覚になってしまいます。そんな感覚で何事もなかったかのように無傷でいられる人は滅多にいないでしょう。

レイプ被害者は自問します。何故私なの?何故こんな災いが私に降りかかるの?私が何をしたと言うの?

でも被害者はその質問の答えを見つける事はできません、何故なら彼女たちは何も悪いことをしていないからです。

レイプは加害者が被害者の苦しみの中に喜びを見つける無料で実施できる犯罪です。罪悪感が邪魔をして被害者にはその犯罪は見えていません。ですから絶えず被害者は理由を求めます。自分の体験の中に自分が真実だと思える理由を見つけ出します。例えば、罰を受けるようなレイプなら、被害者の中でレイプをされた理由は、自分が何か悪いことをしたからレイプされた、となります。

被害者が身を守ることは不可能だったこと、身を守る必要はなかった事を受け入れられない限り、レイプを自分で防止するべきだったと言う観念に見舞われ、そこから先へ進めなくなります。唯一レイプを止められたのはレイプ犯ですが、レイプを実施したわけですから、犯人には更々その気はなかったのです。

レイプ被害者を支援しようとしている方は、レイプの中に被害者の役割はまったくなく、何も出来なかった事を理解する必要があります。さもなければ、被害者との会話は最悪の結果を生みかねません。

聞いて、罪悪感をなくす

「あなたに責任はない」、とレイプ被害者に繰り返すのは大変いい事ですがそれでは事足りません。最終的な目標は被害者がただ、されるがままにレイプをされたのではなく、その時、被害者にできた最善の事をしっかりと実施したことを、理解させることです。

会話の中で大事なのは被害者が試みた事をクローズアップすることです。例えば、被害者が攻撃者を説得してみたとすれば、それについて話し合ってください。自分をレイプしようとしている男性を説得するのは大変勇気のいることですし、イマジネーションも必要です。被害者が必死にレイプを防ごうとした証拠です。残念ながらこの手の手段はレイプにはまったく有効ではありません。レイプ犯は被害者の頼みはや話しには一切耳を傾けません。ですが被害者に、その時何もせずにいたのではなく、レイプを防ごうとしたと言う事を認識させることは、破壊された被害者の心を再生してくれます。

加害者に対して一言も言葉を発することのできなかった被害者は加害者に理由付けを求めた被害者より勇気がないと言うわけではありません。その人も自分なりに自分の身を守ったのです。支援者が被害者にかける言葉は。「無言になって、身を守らないのは自然の反応よ。」レイプ+傷+顔にあざやコブの怪我を防げたわけですし、何も言わず、抵抗しなければ、蹴りやパンチ、最悪の場合ナイフで刺される事もない。

語の中で被害者がレイプを防いで見た行動を見つけ出すのが支援者の役割です。例えば、被害者は電話をしようと思ったが出来なかった、又は、扉まで行ったが逃げられなかった、攻撃者を払いのけてみたが、体力が追いつかなかった、等です。

被害者の話の中でポジティブに使える要素がなければ、罪悪感を消すために使ってください。「殴られないため、殺されないために行動をしない事は攻撃者の行為に同意をしたと言う事にはならないの。レイプ犯だけにこの犯罪の全責任があるの。」と被害者に話してみてください。

 

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